ワインは長寿の薬

Chi beve vino campa cent’anni.

こんにちは。秋もだいぶ深まってきました。芸術鑑賞、読書、グルメなど、季節ならではの楽しい時間をお過ごしでしょうか?シエナではオリーブやブドウの収穫も一段落して、オイルやワインの初物が出回り始めました。今回はイタリアの食卓と切っても切れない関係にあるワインのお話し。11月のnovello解禁のお祝いをテーマにお便りします。

 通称novelloと呼ばれるvino novelloは、収穫されたばかりのブドウから作られる「新酒」とも呼ばれる旬のテーブルワイン。収穫年の12月31日までに瓶詰めされ、解禁日は毎年11月6日とされています。厳密にはvino nuovoと呼ばれる一般的な新酒とは異なり、novelloは最低30%以上の新物のブドウを含み、フランスのボジョレー・ヌーボーと同様に「炭酸ガス浸潤法」という醸造方法で作られます。この醸造方法ではブドウを破砕せずに自然発酵させるので、novello独特のタンニンが少なくフレッシュで軽い口当たりに仕上がります。

形容詞novelloは現代イタリア語で「生まれたての、できたての、新米の」という意味があり、patate novelle(新ジャガ)、sposi novelli(ホヤホヤの新婚さん)などと使われます。語源は形容詞nuovoと同じくラテン語のnovusで、それに縮小辞をつけたnovellusがもとになっています。

解禁日にはイタリア各地で新酒を祝うfesteが盛大に開催されます。シエナの町では、毎年11月5日の夜中から6日の未明にかけて旧市街のトロメイ広場でnovello祭りが開かれます。主催はCivettaのコントラーダで、屋外コンサートに興じながらnovello解禁の夜を祝おうという趣旨。広場の小さな屋台ではボトル1本5ユーロ、紙コップ一杯1ユーロという手軽な値段でシエナ近郊で作られたvini novelliが販売されます。屋台には老若男女が群がり、小銭を手に押し合い圧し合いでワインを買い求めます。

また、novelloはその年のブドウの出来を評価するためにも大切なワイン。エノテカやレストランではvini novelliの試飲会も催されます。シエナの国立エノテカで開かれるnovello祭りでは、テラスで供される相性抜群の焼き栗を楽しみながらイタリア各地の新酒をテイスティングすることができます。

エドモンド・デ・アミーチスがIl vino aggiunge un sorriso all’amicizia ed una scintilla all’amore. と言ったように、気心のしれた仲間や大好きな恋人と過ごすnovello解禁のお祝いはすてきな時間になりそうですが、飲みすぎにはくれぐれもご用心。Errare è umano, perdonare è divino. (過つは人の常、許すは神の業)を文字って、Errare è umano, perdonare è di vino.(過つは人の常、許すはワインの業)などと苦しい言い訳をしないように節度を持って楽しみたいものです。

*当記事は2012年11月付けで公益財団法人 日伊協会のサイトにて紹介されています。