心に宿る甘い思い出

Un ricordo dolce in un cantuccio del cuore.

dopo palio1.jpgこんにちは!暑いあつい今年の夏、いかがお過ごしですか?お盆休みも過ぎ、暑い季節もそろそろ終わりに近づいてきました。イタリアではferragosto(聖母被昇天の祝日)、そしてシエナでは8月のパリオ祭も終わり、夏休み気分も一段落です。涼しくなってくると旺盛になるのが食欲!ということで、今回は食欲の秋に先駆けて、シエナのスイーツdolci senesiについてお便りしたいと思います。

 
イタリアの各地に名産のスイーツがあるように、シエナでも古くから独自のお菓子が作られてきました。シエナのお菓子は旅のお土産としても人気があり、イタリア国内だけでなく国外でもよく知られています。

 
panforte.jpgその代表格と言えるのがpanforte。小麦粉、砂糖、スパイス、アーモンド、ヘーゼルナッツ、砂糖漬けのフルーツから作られる背の低い丸いケーキで、クリスマスのスイーツとしても有名です。その名の通りとてもかたく(pane forte = pane sodo)、手に取るとずっしりと重みを感じるほど食べ応えもあります。10世紀頃までは小麦粉と水をベースにした質素なお菓子でしたが、十字軍が東方から持ち帰った高価なスパイスを生地に練りこむようになり、貴族のための高価なお菓子になったと言われています。

 
同じく有名なのが、ricciarelliと呼ばれるやわらかいクッキーのような焼き菓子。アーモンドプードルが40%ほど入った風味豊かなお菓子です。こちらも起源は東方と言われ、16世紀に十字軍から帰還した騎士が持ち込んだお菓子がベースになったとされています。当時は貴族のサロンやパーティーなどで饗されたようです。現在はチョコレートの入ったバージョンもあり、お茶やコーヒーだけでなく、アマレットのリキュールや甘めの発砲ワインなどとの相性も抜群です。

 
cantucci.jpg食後酒と一緒にいただくスイーツと言えばもう一つ、アーモンドの入ったカリカリのクッキーcantucciを忘れることはできません。甘口の貴腐ワインvin santoといただくお馴染みのクッキーは、別名biscotti di Pratoとも呼ばれ、シエナを含むトスカーナ州の各地で昔から作られています。1691年版のクルスカ学会の辞書にはcantucciと呼ばれていたお菓子について記載がありますが、当時特に有名だったのはピサで作られたものだったようです。もともとの語源はcantoという名詞で、cantuccioには本来「隅っこ」という意味があります。

 
シエナには、ほかにもcavallucciやpan co’ santiなど色々なdolciがあります。Conserviamo un ricordo in un cantuccio del cuore(心の片隅に思い出をしまっておく)。異国で出会ったスイーツに旅の思い出をいっぱい詰めて、甘いバカンスを口いっぱいに頬張ってみてはいかがでしょうか?

 

*当記事は2013年8月20日付けで、公益財団法人 日伊協会のサイトで紹介されています。